すべて2019.03.20
音楽の著作権について、許諾を受けずに楽曲を流していた店舗が、JASRACをはじめとした『著作権管理団体』に訴えられたというニュースがたまに話題になります。
リラックス効果など、様々な利点がある仕事中のBGM。せっかく流すなら、違反を気にせずに安心して使用したいものです。そこで今回は、オフィスで流す音楽の著作権について解説していきます。
結論から言うと、オフィスや工場などで主に「従業員のみ」が聴くのであれば、購入したCDやストリーミングサイトの音楽を流すことに問題はありません(※1)。
しかし、「従業員のみ」というのがポイントで、頻繁にお客様を迎える事業所の接客スペースで音楽が流れていると、著作権法に抵触する可能性がでてくるのです。作業スペースで流れているBGMから、完全にシャットアウトされたお客様用の応接室を作れば対応はできますが、ワンフロアで事業を行っているオフィスなどでは、現実的ではありませんね。
また、「クラシックには著作権は無い」といわれることがありますが、実はこれは間違い。「著作権法」によると、楽曲を含めた著作物は、著作者の死後70年間(2018年12月の法改定により「死後50年」から延長されました)守られますので、クラシック音楽であっても上記の年内は保護の対象となります。例えば、1996年に亡くなった武満徹氏の楽曲は、クラシックであってもまだまだ保護期間内です。
では、モーツァルトやチャイコフスキーなど、昔に亡くなった作曲家の曲なら、すべて問題ないのかというと、そこには「著作隣接権」という権利が絡んできます。これは、著作権法第4章(89条~104条)(※2)に規定されており、歌手・指揮者などの「演奏家」や、CDを製作した「レコード製作者」に認められる権利です。
つまり大昔の楽曲であっても、70年以内に録音された曲であれば、演奏家やレコード会社に権利が発生するのです。
ちなみにテレビやラジオでかかった曲を、そのまま流すことは問題になりません。(放送局が既に著作権管理団体に使用料を払っているため)
上述のケースと同様に、USENなどの「はじめから商用利用を想定した音楽配信サービス」も、運営会社が使用料を払っていますので、お客様が頻繁に出入りするオフィスや店舗での使用であっても、著作権法違反に問われることはありません。
ここまで音楽著作権に関する個別の事例を見てきましたが、そもそもの「著作権」とはどういうものでしょうか?
大前提として「著作権」とは、作者が創作した「音楽・絵画・映画・小説」などの「著作物」に発生する権利になります。
そして特徴的なのは、著作権は登録や申請することで発生する権利ではなく、著作物が創作された時点で、自動的に発生するということです。
つまり、例え鼻歌であってもあなたがオリジナルの曲を作った時点で、それには著作権が発生します。いまの時代であれば「ネットにアップした鼻歌が、思いがけず大ヒット!」なんていうケースもあるかもしれません。
しかし、仮にその鼻歌が流行ったとしても、それだけではあなたに報酬は入りません。
著作権の中には、その音楽を第三者が演奏することを認める「上演権・演奏権」や、インターネット上に配信する権利「公衆送信権」などが含まれています。
そのため「作品をCDにしたい」「演奏したい」「ネットでダウンロード販売したい」などの申し出に対し、その都度あなたが直接話し合って使用料を払ってもらうことも出来ます。
しかし、作品が様々な場面で使われるようになると、個別の問い合わせに応じるのは非常に面倒になってきます。
そこで登場するのが、JASRACをはじめとする「著作権管理団体」です。JASRACは利用者に作品の使用許諾を出して使用料を受け取り、それを著作者に届けるなどして、多くの著作権をまとめて管理しています。
最近、冒頭にも挙げたような「著作権侵害でJASRACと係争になる」事例が増えています。
例えば2018年には、BGMを無許可で流し、訴訟を起こされていた理容店が札幌地裁で敗訴。これは、JASRACが管理するBGMの無許可利用に関する、全国初の判決になりました。(※3)
また2019年には、無許可使用をしている山梨・大阪・福岡の飲食店3店舗を、使用差し止めと損害賠償を求めて提訴しています。(※4)
実は、BGMを流すためにJASRACと契約を結んでいる店舗は、2002年には99%にも及んでいたのですが、2014年には65%にまで低下しているとのこと。この背景には、携帯音楽プレーヤーやネットのストリーミングサービスの発展が大きいと分析されます。
今のところ、著作権的に不正利用されているオフィスBGMが、大きな問題になったケースはありません。
しかし上述のように、(世論の賛否はあるものの)昨今のJASRACでは著作権管理の取り締まりも厳格になってきています。そのため、不正利用されているオフィスBGMにも、今後そのメスが入ることは十分に考えられるのです。
弊社でも、業務の効率化を図るためのオフィスBGMを設計し提供しています。オフィスで流す音楽の著作権のことから、どんな音楽をオフィスに適しているのか?など、オフィスで音楽を流すことをご検討される際はお気軽にご相談ください!
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